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宮廷風恋愛

12世紀までの時代のヨーロッパの男女の関係は、経済的行為としての結婚観があり、一方恋愛は結婚とは別のものと考えられ、女性は男性と対等とは見なされず、 男性にとって愛とは肉体的な満足を得るためのものでありました。また、恋愛は狂気とも考えられていました。

12世紀頃、南フランスの宮廷社会において、全く異質の愛が謳われようになりました。女性を肉欲の対象と見ている一方で、 憧憬と崇拝をもって意中の女性に奉仕する喜びを謳っていて、それまでの肉体的な快楽に結びついていた愛を精神的な愛に昇華させたとされています。

騎士が貴婦人に誠の愛を捧げるという、いわゆる「宮廷風恋愛」です。

宮廷風恋愛とは、 耐えられないほどの愛の痛みをさしていて、報いられることを目的としていないので、 愛が憎しみに変わることはないとしています。

宮廷風恋愛というのは、君主である夫とその妻、 若い騎士によって形成される三角関係で、 いわゆる不倫です。

恋する騎士は、喜びと人間性の向上を得るとされていました。

それまで情熱的恋愛は非理性的とされ徳とは見なされませんでしたが、 12世紀の新しい恋愛観は人格の向上に繋がる、 洗練された行動と考えられたのです。

また、 恋する者は、 一定の戒律、手順に従わなければならないとされ、「愛の規則31か粂」 などが定められ、 模擬裁判のような恋愛談義を宮廷の女性たちは楽しんだといいます。

宮廷風恋愛は、愛と徳を結びつけることで、倫理的な効用ももたらしたといいます。

恋愛は、 粗野な者を洗練させ、 生まれの低い者を人格優れたものにし、 傲慢なものを謙虚にする。 また、 恋する人は他の人々にも親切である。 愛の対象者をあらゆる美徳でかざり、 唯一人の女性に貞潔を捧げるからである。 騎士道精神と密接に関係する宮廷風恋愛の成立により、 初めて西欧文化が形作られたといいます。

結婚は個人的な感情の問題ではなく、 家と家を繋ぐ制度で、恋愛は個人の問題であり、当時恋愛は結婚の枠外で成立する他なかったといえます。また心を痛いほど焦がす恋は非日常のものであり、 結婚は現実的な日常の世界にあったといえます。

高貴な女性が恋の道を知らぬ未熟な身分の低い男性に教え諭したもの。
『雅な恋の理論 (要約)』

・(恋愛の騎士道にふさわしいと願うものは)貪欲であらず心の広いものであればならぬ。与えることに愉しみを。
・悪口陰口をたたくことなく、慎ましくあれ。悪口は美しくない。
・悪者を讃えてはならぬ。慎重な叱咤で彼らを諭せよ。しかし無理なら交友から排除しなければならない。
・不幸なものを嘲ってはならない。
・過度な笑いは控えよ。
・恋愛の喜びには適度に耽るべし。
・古人の偉大な行為を思い讃えなければならない。
・複数の恋人をもつべからず、唯一の女性のために尽くせ。しかしそのためにすべての女性の奉仕者であれ。
・戦いにおいては勇猛果敢大胆不敵にあれ。
・嘘をいうな。また話しすぎたり逆に黙り過ぎないように。
・あまり気安く約束を結ばない。
・お洒落は適度に抑え、誰にも賢く従順であれ。
・狂人のように振舞うな。
・贈り物は喜んで受け取らねばならない。
・汚らわしい言葉を絶対につかってはならぬ。
・無礼を受けてもあからさまに非難してはならない。

高貴な女性が同じ身分の高貴な男性へ送った条文。
『恋の掟13か条』

1 貪欲を棄て、余裕さを持て。
2 嘘偽りを言わぬよう心がけよ。
3 悪口をいうな。
4 誰のものであれ恋愛関係を多くのものに暴露するな。
5 腹心の友を作るな。
6 愛する女性のために貞潔を保て。
7 他人の愛する恋人を横取りするな。
8 結婚してもふさわしい相手を選べ。
9 貴婦人たちの命令に注意深くあれ。
10 恋愛の騎士道に身を捧げるにふさわしいよう日頃努めよ。
11 いかなる場合も丁寧で雅やかな態度を示せ。
12 恋愛の喜びに耽りつつも恋人の望みを超えてはならない。
13 羞恥心を保て。

ブリテンの騎士が番人や巨人らとの死闘の末、愛しき森の貴婦人に持ち帰った条文。
『愛の規則31か条』。

1 結婚は恋愛の妨げにはならない
2 嫉妬しない者は愛することはできない。
3 同時に二人の女性に心を与えることはできない。
4 恋心は強まったり弱まったりする。それはたえず新たにされる。
5 恋する者は彼の意中のひとの許しなしに何物も手に入れることはできない。
6 男は思春期に達しないと恋をすることはできない。
7 恋人が死ぬと、残された者が新たに恋に落ちる前に二年の猶予期間が必要である。
8 確かな理由なしに何人も愛する者から引き離されてはならない。
9 愛神にそそのかされることなしには恋することはできない。
10 恋する者は物惜しみしない。
11 恋する男は自分より高い身分の女性を愛さねばならない。
12 完全な恋人は恋する人の抱擁以外の抱擁を望まない。
13 恋愛は、もしそれが持続することを願うなら、秘密にしておかなければならない。
14 愛を勝ち得ることは困難であらねばならない。それが愛を価値あらしめるものだからである。
15 完全な恋人は意中のひとを前にして蒼ざめる。
16 恋する男がその対象を目にするとき、彼の心はおどる。
17 新しい恋は古い恋を追い払う。
18 ただ美徳のみが人を愛されるにふさわしくする。
19 愛が弱まり、そして消えるとき、それがふたたび強さをとりもどすことは希である。
20 恋する者は畏怖のなかに生きる。
21 嫉妬は恋心をつのらせる
22 恋する者が恋人を疑うとき、嫉妬と情熱が増す。
23 恋心にさいなまれ、恋する者はほとんど眠らず、またほとんど食べない。
24 恋する者は意中のひとを思いつつ身を処しなければならない。
25 完全な恋人は、意中のひとが気に入ると思うものしか愛さない。
26 恋する男は自分の心が選んだ人に何事も拒むことはできないだろう。
27 恋する男は意中の人の与えてくれる喜びに飽きることはない。
28 きわめて小さな疑いも、恋する者に恋人の心のなかの最悪のことを疑わせる。
29 愛は情欲と韻を踏まない。
30 真の恋人は愛する人の面影にたえずつきまとわれている。
31 一人の女性が二人の男性に、そして一人の男性が二人の女性に愛されることを妨げる者は何一つない。

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